『グッバイ・ファーストラブ』を見た!

渋谷、シアター・イメージフォーラムにて。

ヨーロッパの映画は、やはり何か違う。このところアメリカの映画しか見ていなかったので、ハリウッドの完全に計算された脚本、観客の心理に自在に働きかける、サービス精神全開の演出に慣れてしまっていて、映画はそういうものだと思い込んでいた。

この映画は主演ローラ・クレトンがあまりにも自分のタイプで、またフランスらしい色っぽい雰囲気がずっと漂っているので、最後まで見れたが、そうじゃなかったら途中で私は寝ていただろう。人が普通に暮らし、悩み、遊び、別れる様をとくに凝った演出もなく映し出していく、このヨーロッパな感じを久々に味わった。主演女優はあどけなさと芯の強い大人びた感じをもっていて、かつ清楚な美人で女らしさもあり、スクリーンに出るべくして出てきた存在だと思う。

少女が自立して大人になるにつれ、序盤~中盤は頻繁に登場してきた両親が画面に出なくなり、また仕事の場面が多くなっていく点が、当たり前といえば当たり前だがリアルで、自分も親と会うのは年に数回だし普段は仕事ばかりだなと、ふと思った。

 

 

『ジャンゴ 繋がれざる者』を見た!

渋谷シネパレスにて。面白かった! タランティーノの脚本と演出に気もちよく引きずり込まれ、何も考えず楽しめた。復讐の旅の過程で悪役が次々撃たれて死んでいくのだが、血しぶきを上げて倒れる彼らのカットはそれぞれ工夫されていて魅力的だった。また、ドクター・シュルツをはじめ各キャラクターのセリフは、饒舌なユーモアと、無駄な言葉を一切排したようなテンポの良さが同居していて、会話だけを取り出して読んでみたいと思った(脚本を下記で入手できたhttp://twcguilds.com/assets/screenplay/django/screenplay.pdf)。ジェイミー・フォックスが演じる主人公ジャンゴの衣装が劇中で何度か変わっていくのだが、どれも格好よく、彼の魅力を増していて、衣装のもつパワーを感じさせられた映画だった。

『ゼロ・ダーク・サーティ』を見た!

本作は、ビンラディン暗殺におけるCIAの諜報活動と特殊部隊の実行作戦を描いたものである。結末がわかっているにもかかわらず、信じられないほど緊張感のある映画だった。米国同時多発テロからビンラディン殺害まで、米国が実行してきた現実をのぞき見た気分にさせられるし、またここで目にする内容はきっとある程度まで本当の現実とイコールなのだと思う。一貫してドキュメンタリー・タッチであり派手な演出は皆無だが、それでもまったく退屈しなかったのは、映画としてのクオリティの高さはもちろんだが、事実のほうがあまりに派手で荒唐無稽だからという面もあるだろう。他国において、無断で自軍の作戦部隊を展開するというのはやはりものすごいことであるし、

『ルビー・スパークス』を見た!

モテない文系男子(作家)が自分の理想の女子とつき合いだすという、非常に感情移入してしまう内容で、とても楽しんで見れた。若くして成功した作家が、つくりの良い一軒家で一人暮らす様子はなんというかおしゃれで、正直に言って私の憧れである。またヒロインの女子はルックス、雰囲気ともに、まさに文系男子が恋に落ちるのにふさわしい感じの魅力を放っていた。

しかし上記のような楽しめる要素がありながらも、映画が描いているのは、自分と他者、という真剣みのあるテーマだったと思う。終盤、意に沿わない行動をとる恋人の性格をつくり変えるシーンは迫力があったが、思いのままにコントロールできるようになった女子は、人間とは呼べないような不気味な存在になってしまっていた。私たちは、ときに不愉快な思いをしながらも、自分とはちがう思考をもつ他者と関係を結んで生きるしかない、ということを思わされた映画だった。

 『東ベルリンから来た女』を見た!

見終わった感想としては、冷戦下の東ドイツで生きる普通の人たちを描いた、質の高い映画だと思った。
最初から最後まで、一定の緊張感がある。主人公バルバラにつく監視の描写が定期的に挟まれるし、西側への脱出が彼女の一応の目標ではある。監視をかいくぐったスパイ行為や、西ドイツから忍んでやってくる恋人との密会、というシーンもあるのだが、しかしそういったサスペンス的な行為が映画のメインかというと、そうではなかった。
バルバラ役の女優は、物語序盤の固く険しい表情と態度から、少しづつ感情を出していく抑えた演技が素晴らしいと思う。劇中、めずらしく太陽の日ざしがそそぐ中で、ヴォルフと自転車で並んで走る場面は美しかった。
もう一つ、音楽が印象に残った。バック・ミュージックは使われず、代わりに人やものがたてる音が強調される。病院の廊下を歩く靴音や、カルテをめくる音。自宅の窓の外に聞こえる、当局の監視員が乗る車のエンジン音。こういったものを意図的に聞かせる演出が自分の好みだった。