『東ベルリンから来た女』を見た!

見終わった感想としては、冷戦下の東ドイツで生きる普通の人たちを描いた、質の高い映画だと思った。
最初から最後まで、一定の緊張感がある。主人公バルバラにつく監視の描写が定期的に挟まれるし、西側への脱出が彼女の一応の目標ではある。監視をかいくぐったスパイ行為や、西ドイツから忍んでやってくる恋人との密会、というシーンもあるのだが、しかしそういったサスペンス的な行為が映画のメインかというと、そうではなかった。
バルバラ役の女優は、物語序盤の固く険しい表情と態度から、少しづつ感情を出していく抑えた演技が素晴らしいと思う。劇中、めずらしく太陽の日ざしがそそぐ中で、ヴォルフと自転車で並んで走る場面は美しかった。
もう一つ、音楽が印象に残った。バック・ミュージックは使われず、代わりに人やものがたてる音が強調される。病院の廊下を歩く靴音や、カルテをめくる音。自宅の窓の外に聞こえる、当局の監視員が乗る車のエンジン音。こういったものを意図的に聞かせる演出が自分の好みだった。